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この業界に入る前は自動車整備士でした。でも、繊細で神経を使う作業が多く、高い技術が求められる仕事が性に合わなかったため２年半ぐらいで退職しました。その後、特にやりたいこともなかったのでフリーターに。映像作りがしたいと思っていたわけではありませんが、「ごっつええ感じ」や「電波少年」などのテレビ番組や映画が好きで、うっすら放送作家って面白そうだなというイメージは持っていました。

整備士時代の心の救いがお笑い番組だったこともあり、当時の自分を救ってくれたテレビの仕事がしたいと思い、大阪の制作会社にアルバイトで入社。ロケは一期一会で変化があり面白いですし、編集や台本書きなど色々できるのも楽しくてのめり込み、この業界でやっていこうと思うようになるまで時間はかかりませんでした。その後、その会社で正社員となり、フリーランスを経て上京。東京は何かとスケールが大きく群雄割拠の世界だと感じており、日々、戦っております。背中を押してくれた奥さんには本当に感謝しています。

これまでたくさんの制作に携わってきましたが、そのほとんどの仕事が成長させてくれました。この仕事はタレントさんや取材先、スタッフ、番組ごとに環境が変わるので毎回新鮮で刺激的ですね。ディレクターになりたての頃は、よく段取りの悪さをタレントさんから怒られていました（笑）。だからロケの前は緊張で夜も眠れなかったですよ。

業界歴１３年（おそらくですが）となった今でもとんでもないミスをすることもあります。大変なことも多い仕事ですが、企画なら自分が考えた演出がバチッとハマった時、ロケなら思い通りに事が進み笑いが起きた時、編集なら作り込んだ結果、V T Rを観てくれる方の反応が良かった時なんかはものすごいやりがいと達成感を感じますね。それと、最近はSNSで視聴者の声がリアルにわかるのも面白いです。いい反応だとめっちゃ嬉しくて。ついつい暇があればエゴサしてしまいます。

2022年4月から始まった「種から植えるTV」の演出を担当しています。レギュラー番組の演出を担当するのはこれがはじめてのこと。メインキャストの児嶋さんと二人三脚で取り組んでいます。この番組、バラエティなんですがガチの農業番組なんです。全くの素人のタレントさんが収穫だけではなく種付けや袋詰なども実際にやりつつ、バラエティ要素を織り交ぜるという今までなかったタイプの番組。

最初に企画を聞いた時は、いろんな意味で「難しい…！」というのが第一印象でした。私も児嶋さんも農業のことは全くわからないので、まず知識を得るところからスタート。本やネットで色々調べたり、事前に農家さんのところに行って畑を見せてもらったり。しかも、こう言ってはなんですが、農業作業をずっと撮っていても面白くないんですよね。たとえば菜の花を刈り続ける映像を飽きさせないようにするにはどうすればいいかなど頭を悩ませました。だけど僕としては、日曜の昼間という放送時間をふまえて「何も考えずぼーっとしていたい」という人に観てほしかったので、あまりテンポよくしたくなかったんです。刺激がほしい人は「スクール革命！」とか「アッコにおまかせ！」とか観ると思うんで（笑）。その辺りのさじ加減を含めて今も色々と模索中です。